「AtoNo Rec.」→「作詞AtoZ」

作詞

 

B   「beat(ビート)」

 

「beat(ビート)」とは、もともとは「拍」という意味の音楽用語。

つまり8ビートと言えば8拍ということ。

たとえば4分の4拍子の8ビート曲なら、1小節の中に8分音符がタタタタタタタタと8回鳴っているイメージの曲ということになりますね。

と、まぁ音楽的な話はこれくらいにして、ここから先は歌詞の話をしていくことにしましょう。

 

歌詞を作ろうとする時、作曲家から「ビート感のある歌詞をお願い!」といったようなことを言われることがよくあります。

この場合の「ビート感」とは、多くの場合「ビート感」イコール「ノリの良い」といったような意味であり、これに当てはめて先ほどの作曲家の言葉を言いかえれば「ノリの良い歌詞をお願い!」ということになってきます。

ですから歌詞作りの中で使われる「ビート」という言葉の意味は、もともとの意味である「拍」とは異なるものになっている……ということですね。

「フロー」「グルーブ感」などと言った言葉も、歌詞においては、この「ノリの良い」と(ほぼ)同じような意味で使われることのある言葉です。

 

さて、ここからが今回の話の本題。

作詞家が、言葉にビート感を出すためにどんなことをしているのかを話していくことにしましょう。

 

日本語の最大の弱点のひとつに間延びということがあります。

つまり、たとえば「タン・タン」と2つの音があったとします。

そこに言葉を乗せることを考えてみましょう。

日本語の場合、基本的にはひとつの音に対して、一文字が乗ることになりますから、「いま」とか「ゆめ」といったような二文字の言葉が乗ることになります。

これに対し、英語なら「love you」とか「kiss me」のような言葉も乗せることが可能になってきます。

ふたつの言葉を「タン・タン」という音に合わせ発音し比較してみると、どうしても日本語の方が少し間延びして聞こえてしまいますよね。

それを克服するためのテクニックのひとつとして「促音(そくおん)」の多用ということがあげられます。

「きっと」「やっと」「そっと」のように、小さい「つ」が入る言葉のことですね。

文字にすると3つですが、「タン・タン」という2音には気持ちよく入ってきますよね。

そして「いま」「ゆめ」といった二文字の言葉よりも間延び感も少なくなっています。

 

この他にも「二重母音」や、フレーズを「体言止め」にしていくといった方法も、歌詞にビート感を出させるためには頻繁に使われているテクニック。

(「タン・タン」も実は「tan・tan」で二重母音の一種。ですから、文字にすると4つなのに2音のメロディーにも入っていたわけです。)

 

さて、ここまで話してきて……最初に出てきた8ビートのタタタタタタタタに「きっと」「やっと」のような促音の言葉を入れてみると……「きっと」が「きと」に、「やっと」が「やと」に聞こえてしまい、これを2音で歌うのは難しいゾ、と気づかれた方もいるのではないでしょうか。

ちょっと不思議ですね。

 

でもそこから先の話は長くなりそうなので、また別の機会にすることにしましょう。

ではまた。

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