歌に方言のなまりが出るとき|アクセントのそろえ方

歌にだけなまりが出てしまう人は、歌詞の言葉を「高さの形」で見直すと、短い練習で整っていきます。

歌になまりが出るときは、次の三つを順に見ていくと整います。一つ目は言葉ごとの高低の形(アクセント)、二つ目は母音と子音のくせ、三つ目は語尾の処理です。話すときは気にならないのに、歌うと急に目立つのは、メロディに乗ることで言葉の高低が強調されるからです。ここでは、歌詞を話し言葉に戻して確かめる方法から、一語ずつそろえる練習メニューまでを順番に紹介します。

歌でなまりが目立つ理由

話し言葉では、言葉の高低は文の流れの中で自然に聞こえます。ところが歌では、音の高さをメロディが決めるため、言葉の高低とメロディの上下がずれたり、重なったりして、聞き手の耳に残りやすくなります。さらに歌は一音を長く伸ばすので、普段は流れてしまう母音のくせや語尾の形も、はっきり届きます。

つまり、なまりは歌の上手い下手とは別の話で、話し言葉の習慣が、歌という拡大鏡の下で見えているだけのことです。見えているということは、直す場所が特定しやすいということでもあります。

この見直しは、方言の人だけのものでもありません。標準的な話し方をする人でも、歌になると語頭の音が弱くなったり、語尾が流れたりするので、同じ手順で言葉の輪郭がはっきりします。

なまりの種類を三つに分ける

「なまり」とひとことで言っても、中身は別々です。どれに当たるかが分かると、練習も絞れます。

種類 例 見つけ方
アクセント(高低の形) 「はし」「かき」など、同じ音の並びで高低が違う言葉 言葉を一語だけ声に出し、高さの形を確かめる
母音・子音のくせ 「い」と「え」が近くなる、「ひ」と「し」が入れ替わる、「せ」が「しぇ」になる 一音ずつゆっくり言い、口の形を鏡で見る
語尾・つなぎのくせ 語尾が上がる、言葉の最後を伸ばしすぎる、「えい」が「えー」になる 歌を録音し、各フレーズの最後だけ聞き直す

たとえば、友だちとの会話で言い間違いを指摘されたことがある場面を思い出してみてください。そこで指摘された言葉が、歌でも出やすい言葉です。まず自分のくせを三つの箱に仕分けるところから始めましょう。

歌詞を話し言葉に戻して確かめる手順

歌のなまりは、歌いながら探すより、歌詞だけを取り出して探す方が早く見つかります。次の手順で進めます。

  1. 歌詞を一行ずつ印刷するか、スマートフォンに表示します。
  2. メロディをつけずに、標準的な話し言葉の高さで、ゆっくり読み上げます。
  3. 読みにくい言葉、読むたびに高さが揺れる言葉に印をつけます。
  4. 印をつけた言葉の高低を、アクセント辞典やオンラインの発音辞書で調べます。発音の高低は、NHKの日本語発音アクセント辞典や、東京大学の「OJAD」などでご覧いただけます。
  5. 調べた高低の形を、歌詞の上に「高」「低」の線で書き込みます。

この作業は、一曲につき一回で十分です。印が多い曲でも、全部を一度に直そうとせず、サビなど目立つ部分から取りかかると進めやすくなります。

なお、印をつけるときは、色を二つ使うと便利です。たとえば、高低が不安な言葉は青、母音や語尾が不安な言葉は赤、と分けておきます。練習のときに、今日は青の言葉だけ、明日は赤の言葉だけ、と日ごとにテーマを決められるので、迷わず進められます。

アクセントをそろえる練習メニュー

歌詞に印をつけたら、次の順番で練習します。段階を飛ばさず、前の段階が楽に言えてから次へ進むのがコツです。

  • 一語だけ読む:印をつけた言葉を単独で、高低の線どおりに言います。三回続けて同じ形で言えたら合格です。
  • 前後をつけて読む:言葉の前後の語もつけて、フレーズ単位で読みます。文の中でも高低が保てるかを確かめます。
  • リズムだけで読む:メロディの音の長さ(リズム)に合わせて、音程をつけずに読みます。言葉が歌のテンポに乗る感覚をつかみます。
  • メロディの高さで読む:歌うときの高さで、語りのようにゆっくり言います。
  • 歌う:最後に歌います。録音して、印をつけた言葉だけを聞き返します。

一つの言葉に、時間をかけすぎないことも大切です。同じ言葉に何度も取り組むと、かえって力が入って、口が固まってしまいます。一日の練習は、印をつけた言葉の中から数語に絞り、残りは翌日に回してください。

十分間の練習の流れ

時間が取れない日は、十分間でも続けられます。最初の二分で口の形の確認(あ・い・う・え・お)、次の三分で印をつけた言葉を単独で読み、次の三分でフレーズ単位に広げ、最後の二分で歌って録音します。毎日同じ流れにすると、練習の準備に迷う時間がなくなり、習慣として定着します。

母音とつなぎのくせを直すコツ

アクセントがそろっても、母音の形が違うと、なまりは残って聞こえます。次の三つを意識すると、変化が出やすくなります。

口の形を先に決める

「い」は横に引きすぎず、「え」は口を縦に少し開けます。鏡を見ながら、あ・い・う・え・おを一音ずつ、口の形を確かめて言います。歌うときは、その形を保ったまま次の音へ移ります。

連続する母音を分けて言う

「先生」の「せんせい」の最後の「い」のように、二つの母音が続く言葉は、「えー」と伸ばして崩れやすい部分です。ふだんの話し方より少しだけ、後ろの母音をはっきり言います。

語尾は上げずに、息で収める

フレーズの終わりで声の高さが上がってしまう人は、最後の音で息を細く吐き切るつもりで、音を収めます。最後の一音を弱めすぎず、長さを揃えるだけで、すっきり聞こえます。

一人で続けるための点検リスト

練習の効果は、点検の仕方で大きく変わります。録音を聞くときは、次の表の項目を一つずつ確認してください。

点検の項目 確認のしかた
高低の形 印をつけた言葉が、書き込んだ線のとおりに聞こえるか
母音の形 い・えの区別がはっきり聞こえるか
語尾 フレーズの最後が上がったり、伸びすぎたりしていないか
言葉の聞き取りやすさ 歌詞を見ずに聞いて、言葉が聞き取れるか

歌詞を見ずに聞いて言葉が伝わるなら、なまりを気にしすぎなくて大丈夫です。なまりは整える対象であると同時に、その人の声の個性でもあります。伝わりやすさが上がり、歌いたい気持ちが乗っているなら、それが大きな前進です。

録音は、スマートフォンの録音機能で十分です。歌い終わったらすぐ聞くのではなく、少し時間をあけてから聞くと、自分の声を落ち着いて聞き分けられます。前回の録音と並べて聞き比べると、変化が実感でき、続ける気持ちにつながります。

自分のくせを一緒に見つけたいときは

くせは、自分の耳だけでは気づけないことがあります。ATOボーカルスクールは、オンラインでZoomを使って受講できるボイトレのスクールです。たーなー先生は30年のボイストレーナー歴があり、5万人以上を指導してきました。講師が、あなたの歌を聞いて、どの言葉のどの部分に特徴があるかを一緒に確かめます。月4回16,500円(税込)で、1回25分のレッスンです。体験1回でお話だけで終えることもできますので、まずは気になる曲を一曲決めて、お申し込みください。

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よくある質問

方言は直さないといけませんか?

直す必要はありません。伝わりやすさを上げたいとき、聞き手が分かりにくそうなときに、気になる言葉だけ整えれば十分です。

アクセントはどうやって調べられますか?

NHKの日本語発音アクセント辞典や、東京大学のOJADでご覧いただけます。気になる言葉を一語ずつ調べて、歌詞に高低の線を書き込みます。

歌ではアクセントを必ず守るのですか?

メロディが優先される曲も多いので、守る場所を選べば十分です。メロディと言葉の高低がぶつかる場所だけ、語頭の音の処理で整えると自然に聞こえます。

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