ハモりにつられるのは、耳が悪いからではなく、聞く場所が決まっていないからです。主旋律を守る聞き方を身につければ、ハモりが入っても安心して歌えます。
ハモりが入ると主旋律がつられてしまうときは、「自分の声を聞く場所」と「相手の声を聞く場所」を分ける練習が効きます。つられる原因の多くは、耳に入った相手の音を、そのまま自分の音程の目印にしてしまうことです。この記事では、つられる仕組みを整理したうえで、一人でできる四段階の練習と、二人で歌うときの練習のやり方を紹介します。デュエットや合唱、バンドでコーラスが入る場面で、すぐに使える内容です。
ハモりにつられる仕組み
歌っている人は、自分の声を骨を伝わる音と、耳から入る音の両方で聞いています。そこに別の高さの声が重なると、脳は二つの音の高さを同時に処理しなければならず、近い高さの音に引き寄せられやすくなります。特に、ハモりが主旋律のすぐ近く(三度の上や下など)に入ると、引き寄せられる力が強くなります。
つまり、つられるのは音感が弱いからではなく、耳が二つの声を聞き分ける習慣が、まだ育っていないだけです。聞き分ける習慣は、練習で身につきます。
ハモりの代表的な形が「三度」です。主旋律の音から、ドレミの順で三つ上、または三つ下の音を重ねる形で、二つの音がよく溶け合うため、耳には近い音に聞こえます。だからこそ、主旋律が引き寄せられやすいのです。三度のハモりが入る曲では、特に最初の一音を丁寧に出すと安心です。
つられやすい場面のチェック
自分がどの場面でつられやすいかを知ると、練習の的が絞れます。次の表で、当てはまるものを探してみてください。
| 場面 | 起きやすいこと | まず試すこと |
|---|---|---|
| デュエットで相手がハモる | 相手の声の方へ音程が寄っていく | 相手の声から少し体を離し、自分の声の響きに意識を置く |
| 合唱で隣のパートが大きい | 隣のパートの音程に合わせてしまう | 自分のパートの音を、始まる前に小さく出して確かめる |
| バンドでコーラスが入る | コーラスの入りで主旋律が揺れる | コーラスが入る最初の一音を、事前に決めた高さで出す |
| カラオケでガイドメロディがない | 伴奏の和音に引っ張られる | 歌い出す前に、鼻歌で最初の音を確認する |
一人でできる四段階の練習
ハモりにつられない耳は、一人でも育てられます。次の順番で、一段階ずつ進めてください。
- 主旋律だけをしっかり歌う:伴奏なし、または主旋律だけの音源で、迷わず歌えるまで繰り返します。ここが土台です。
- ハモり入りの音源を聞く:歌わずに、主旋律とハモりを別々に聞き分けます。主旋律だけを耳で追い、頭の中で歌う練習です。
- 小さな声でなぞる:ハモり入りの音源を流しながら、小さな声で主旋律を歌います。音程が揺れたら、その場所の手前から繰り返します。
- 通常の声量で歌う:ハモり入りの音源に合わせ、いつもの声量で主旋律を通して歌い、録音して確かめます。
一度で最後まで通そうとせず、揺れた場所だけを短く切り出して練習すると、効率が上がります。
一週間の練習メニュー例
毎日長く練習するより、短い時間を続けるほうが耳は育ちます。次の表は、一日十分から始められる例です。曲は一曲に絞り、ハモりが入るサビだけを使います。
| 曜日 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 月 | 主旋律だけを歌う | 音程が安定している場所と、揺れる場所を印にする |
| 火 | ハモり入りの音源で、主旋律だけを聞く | 主旋律の音を、頭の中で追えているか |
| 水 | 小さな声でなぞる | 揺れた場所の手前から、繰り返せたか |
| 木 | 片耳をふさいで歌う | 自分の声の響きを、体で感じられたか |
| 金 | 通常の声量で歌い、録音する | 月曜の録音と聞き比べ、揺れが減ったか |
| 土 | 二人で歌う、または自分で重ねる | 入りの一音で、つられずに出せたか |
| 日 | 休み、または好きな曲を自由に歌う | 楽しく歌えたか |
週の終わりに録音を聞き比べると、小さな変化にも気づけます。変化が見えると、次の週の練習にも気持ちが向かいます。
表の内容は、体の調子や時間に合わせて入れ替えて構いません。続けられる形にすることが、いちばんの上達の近道です。
耳を育てる三つの道具
手で音の高さを描く
主旋律の高さを、空中で手を上下させて描きながら歌います。目と体で音の高さを確認できるので、耳だけに頼らずに済みます。
片耳をふさぐ
片方の耳に手を当てて歌うと、自分の声が骨を通して聞こえやすくなり、外から入る音に左右されにくくなります。一人でもすぐ試せるやり方です。
自分の声に集中する時間をつくる
歌う前に、自分の声だけで最初の音を出し、その高さを体で覚えます。入りの一音が決まると、後の音程が安定します。
ピアノのアプリや鍵盤を使うと、さらに確かめやすくなります。主旋律の音を一音ずつ弾いて、その音を声で出し、合っているかを確かめます。最初は難しく感じても、一音ずつ重ねるうちに、主旋律の音の位置が耳に定着していきます。メロディを聞き分ける力は、こうした小さな確認の積み重ねで育ちます。
二人で歌うときの練習のやり方
デュエットやハモりのある曲は、一人練習だけでなく、二人での練習も大切です。練習相手がいる場合は、次の流れで進めます。
- 役割を決める:一人が主旋律、もう一人がハモり。最初はハモり側がゆっくり歌い、主旋律の人は自分の声に集中します。
- 距離を取る:肩が触れる距離ではなく、少し離れて歌います。声が混ざりすぎず、自分の声が聞き分けやすくなります。
- 入りだけを繰り返す:ハモりが入る最初の一音、二音だけを、十回繰り返します。つられやすいのは入りの場所だからです。
- 役割を交代する:主旋律とハモりを入れ替えます。相手の立場を体験すると、お互いの声の聞こえ方が分かります。
相手がいない日は、スマートフォンでハモりを録音して、自分で重ねる方法もあります。主旋律を録音し、それを聞きながらハモりを歌うだけでも、聞き分ける力が育ちます。
つられたときの立て直し方
本番で、つられて音程が揺れてしまうこともあります。そのときは、次の三つの切り替えが役に立ちます。
| 切り替え | やり方 |
|---|---|
| 息を一度整える | 次のフレーズの前で、息をゆっくり吸い、自分の声の最初の音を思い出す |
| 聞く場所を変える | 相手の声ではなく、自分の声が口の中や頭で響く場所を感じる |
| 一音だけを丁寧に出す | 次のフレーズの最初の一音だけを、はっきり出す。それ以降は流れに乗る |
揺れたことを引きずらず、次のフレーズで取り戻すと決めておくと、気持ちも安定します。聞いている人にとっては、一瞬の揺れより、その後に立て直す姿のほうが印象に残ります。
音程の感覚を一緒に整えたいときは
つられる原因は、人によって少しずつ違います。耳の使い方なのか、喉の力みなのか、息の量なのかは、歌を聞いてもらうと見えてきます。ATOボーカルスクールは、オンラインのZoomで受講できるボイトレのスクールで、たーなー先生と、そのもとで学んだ講師陣が教えています。たーなー先生はボイストレーナー歴30年、5万人以上を指導し、カラオケ採点100点の教え子も500名以上います。月4回16,500円(税込)、1回25分のレッスンです。体験1回で、つられやすい曲を聞いてもらい、練習のしかたを相談できます。
よくある質問
ハモりにつられるのは音痴だからですか?
音痴とは別の話です。二つの声を聞き分ける習慣がまだ育っていないだけで、練習で聞き分けられるようになります。
合唱で隣のパートの音を聞かないほうがいいですか?
聞かないのではなく、聞く割合を調整します。自分のパートを軸にして、隣のパートは響きの確認に使うと、つられにくくなります。
一人で練習するときの音源はどう選べばいいですか?
主旋律だけの音源、ハモり入りの音源、伴奏だけの音源を用意すると、四段階の練習を順番に進められます。
