走る人にもたる人にも、メトロノームは強い味方です。自分の傾向を知り、音を足場にして整える使い方を紹介します。
歌のリズムが走る、もたるという悩みは、メトロノームを正しく使うと整えやすくなります。結論から言うと、まず「自分が走るのか、もたるのか」を録音で確かめ、次にメトロノームの音を「足場」にして、同じ曲を段階的にくり返します。この記事では、傾向の見つけ方、使い方の手順、1日5分のメニューを順番に紹介します。
走る・もたるは、どんな状態?
走るとは、拍よりも早くなって、曲がだんだん速くなっていく状態です。もたるとは、拍よりも遅れて、曲が重く引きずられる状態です。どちらも、拍の「内側の感覚」が弱くなっていることが原因です。
| 状態 | よくある場面 | 起きていること |
|---|---|---|
| 走る | サビで気持ちが盛り上がる、緊張している、言葉数が多い | 次の音を急いで出そうとして、拍より前に入る |
| もたる | 低い音、長い音の前、息が足りないとき | 音を出す準備に時間がかかり、拍より後ろに入る |
1曲のなかで、走る場所ももたる場所もある人は多くいます。「全部が走る」と決めつけず、場所ごとに傾向を見ていくのが大切です。
まず、自分の傾向を録音で確かめる
歌っている最中は、自分の速さの変化に気づきにくいものです。録音とメトロノームを使うと、傾向が見えてきます。
- 練習する曲のテンポを調べ、メトロノームをそのテンポに合わせる
- メトロノームを鳴らしたまま、1コーラスを歌い、録音する
- 録音を聞いて、メトロノームの音より前に歌っていれば「走る」、後ろなら「もたる」と記録する
- 走る・もたる場所に、楽譜や歌詞カードへ印をつける
録音は、スマートフォンのボイスメモで十分です。メトロノームの音が小さすぎると聞き分けにくいので、声より少しだけ大きい音量にして、イヤホンをつけずに歌うか、片耳だけで聞くと確認しやすくなります。
メトロノームの基本の使い方
メトロノームは、ただ鳴らすだけでなく、使い方に段階をつけると効果が高まります。
段階1:拍をからだで感じる
歌う前に、メトロノームに合わせて足踏みや手拍子をします。拍を「耳」だけでなく「からだ」で感じるために、1分ほど続けます。
段階2:表の拍に合わせて歌う
メトロノームを4分音符で鳴らし、歌詞を拍に合わせて歌います。まずは、1拍目に合わせて歌い出す感覚をつかみます。
段階3:拍の間を歌う
慣れてきたら、メトロノームを2拍に1回、または1小節に1回に減らして歌います。鳴っていない拍を、自分の中で数えて保つ練習です。
段階4:メトロノームを止めて歌い、あとで重ねる
最後は、メトロノームなしで歌い、録音のあとにメトロノームの音と合わせて確認します。最初の拍と最後の拍がどれだけずれたかを見ると、安定が育ったかがわかります。
走る人のための練習
走る人は、次の音を早く出そうとするので、「待つ」感覚を育てることがポイントです。
- 遅めのテンポで始める:曲の本来のテンポより少し遅くして、落ち着いて歌う。慣れたら元のテンポに戻す
- 息を吐く速さをそろえる:息を急がず、一定の流れで吐きながら歌う
- 休符を数える:音がない場所で、頭の中で拍を数える。休符を丁寧に感じると、次の入りが急がなくなる
- サビ前に肩を落とす:気持ちが盛り上がる場所の直前に、深く息を吐いて落ち着かせる
もたる人のための練習
もたる人は、音を出す準備が遅れがちなので、「先に準備する」感覚を育てます。
- 1拍前に息を入れる:歌い出しの前の拍で、息を入れる準備を済ませておく
- 子音を拍の頭に置く:子音を拍より少し前に出し、母音が拍に乗るようにする
- 語尾を長引かせない:音を伸ばしすぎず、次の拍に向けて切り替える
- 少し速めのテンポで練習する:本来より少し速めで歌い、慣れてから元に戻すと、体が軽く動く
もたる人は、息の量が足りなくて遅れることもあります。息を一定に送る練習と合わせると、さらに安定します。
1日5分のメトロノーム練習メニュー
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1分 | 足踏みと手拍子で拍を感じる | メトロノームの音とぴったり重ねる |
| 1分 | ロングトーンで拍を数える | 1つの音を4拍のばし、拍の頭で息を新しくする |
| 2分 | 曲の1フレーズを、メトロノームに合わせて歌う | 走る・もたる場所に集中 |
| 1分 | メトロノームを減らして歌い、録音で確認 | 鳴っていない拍を自分で数える |
うまく合うようになったら、テンポを少しずつ上げたり、曲全体に広げたりして、段階を踏んで進めます。急にテンポを変えず、「合う」状態を確かめてから次へ進むのが、定着への近道です。
テンポを上げる・下げるときのコツ
歌が安定してきたら、テンポの幅を広げて練習すると、本番での対応力が増します。
- 合ったテンポで、5回続けて安定して歌えることを確かめる
- テンポを少しだけ上げて(または下げて)、同じフレーズをくり返す
- 合わなくなったら、1つ前のテンポに戻る
- 日をあけて、前回の最終テンポから再開する
特に、速いテンポで歌詞が詰まる人は、母音だけで先に通すなどの練習を挟むと、口の動きが追いつきやすくなります。
歌詞の言葉数と拍の関係を整理する
走る・もたるは、歌詞の言葉数が多い場所や少ない場所で起きやすくなります。言葉が詰まったフレーズは、1拍のなかに入れる音が増えるので、急いで走りやすくなります。逆に、言葉が少なく音が長いフレーズは、拍の感覚が薄れて、もたりやすくなります。
| フレーズの特徴 | 起きやすい傾向 | 整え方 |
|---|---|---|
| 言葉が詰まっている | 走る | 歌詞を手拍子でたたきながら読み、1拍に入る言葉の数を確かめる |
| 長い音が続く | もたる | のばしている間も、頭の中で拍を数え続ける |
| 休符が多い | 入りが早まる、または遅れる | 休符の拍を、手拍子や足踏みで体に入れる |
| テンポが速い | 走る | 母音だけで先に通し、口の動きを軽くする |
フレーズごとにこの表と照らし合わせると、「なぜここで走るのか」が理由つきでわかり、直し方も選びやすくなります。
拍の数え方を決めておく
練習のたびに数え方が変わると、感覚が定まりません。1小節を4拍で数える曲なら、「1・2・3・4」と声に出さずに数え、歌い出しの拍に印をつけます。8分音符が多い曲は、「1と2と3と4と」と数えると、拍の間を埋める感覚が育ちます。数え方を1つ決めて、同じ数え方で毎日くり返すと、メトロノームがなくても拍が体の中に残ります。
メトロノームの音色と音量の選び方
アプリや機器には、クリック音、ウッド音、ドラムなど、いろいろな音色があります。耳に刺さらず、拍の頭がはっきり聞こえる音を選ぶと、長く練習しても疲れません。拍の頭だけ音を変えられる設定があれば、1拍目を目印にして、小節の頭を意識しやすくなります。
リズムの悩みを、オンラインで一緒に整えませんか
走る・もたるの原因は、息、緊張、言葉の動かし方など、人によって違います。ATOボーカルスクールは、Zoomで受けるオンラインのボイトレです。たーなー先生と、そのもとで学んだ講師陣が、あなたの歌を聞いて、どの場面でどう傾向が出ているかを確かめ、好きな曲でテンポを整える練習を進めます。体験は1回25分で、お話だけで終えることもできます。月4回16,500円(税込)で始められます。
よくある質問
メトロノームに合わせると、かえって歌いにくくなります。
最初は誰でも歌いにくく感じます。足踏みや手拍子で拍を感じてから、短いフレーズだけを合わせて、少しずつ長くしていくと慣れていきます。
スマートフォンのアプリでも練習できますか?
できます。テンポを設定して鳴らせるものであれば練習に使えます。アプリ「毎日ボイトレ」にも、リズムの練習があります。
走る癖と、もたる癖が両方あります。
場所ごとに傾向を記録して、走る場所には待つ練習、もたる場所には先に準備する練習を当てると整います。
