歌うときの舌は、舌先を下の前歯の裏にやさしく置き、舌の奥の力を抜くのが基本です。舌が奥に引っ込む癖は、確かめ方と直し方の順番を知れば自分で整えられます。
歌うときの舌は、舌先を下の前歯の裏にやさしく置き、舌の奥の力を抜いておくのが基本の形です。この形が整うと、声が口の中でこもらず、前に抜けるようになります。この記事では、舌に力が入ってしまう人、舌が奥に引っ込んで声がこもる人に向けて、自分で確かめる方法と直し方を順番にまとめます。
ATOボーカルスクールは、オンライン(Zoom)で受けられるボイトレです。ボイストレーナー歴30年、延べ5万人以上を指導してきたたーなー先生のもとで、声の悩みに向き合ってきました。ここでは、その視点で、舌の位置を考えるときの順序を紹介します。
舌の位置で、声の通り道が変わる
舌は口の中でいちばん大きく動く筋肉で、声の通り道の形を決める役目を持っています。声帯で生まれた音は、喉から口へ抜けるあいだに、舌の高さや位置によって響き方が変わります。舌が奥へ引っ込むと通り道が狭くなり、声がこもったり、喉が詰まったりしやすくなります。
舌の根もとは、喉の奥とつながっています。そのため、舌の奥に力が入ると、喉まわりも一緒に固まってしまいます。歌っていて喉が疲れる、高い音で苦しくなるという悩みの背景に、舌の力みが隠れていることは少なくありません。
逆に、舌がやわらかく前に置かれていると、声の通り道が広く保たれます。声が前に飛びやすくなり、母音もはっきり聞こえます。舌の位置は、声量や音程の前に整えたい、土台のひとつです。
基本の位置は、舌先を下の前歯の裏に置くこと
まず覚えておきたい基本の位置は、舌先を下の前歯の裏側に、軽く触れさせておく形です。押しつけるのではなく、そっと添える感覚です。舌全体はお皿のように平らに広がり、中ほどがほんの少しふくらむくらいが目安です。
この位置を作るときのポイントは、舌の奥をやわらかく下げておくことです。あくびをする直前の口の中を思い出してください。喉の奥が広がり、舌の根もとがふっと下がるはずです。その状態が、歌う前に目指したい舌の形に近い感覚です。
確かめるときは、鏡の前で口を軽く開けて「あー」と声を出します。舌先が前歯の裏にあり、舌が盛り上がって喉の奥が見えにくくなっていないかを見てください。喉の奥がよく見えるほど、舌が下がって通り道が開いています。
ただし、すべての歌詞で舌をそこに固定する必要はありません。「ら」行や「た」行のように、舌が動く音も歌にはたくさんあります。大切なのは、歌い終わったあとに舌が自然にこの基本の位置へ戻ってくることです。
舌が奥に引っ込む人に見られるサイン
舌が奥に引っ込んでいるかどうかは、声と体の両方から気づけます。声では、こもった響きになる、言葉が聞き取りにくい、高い音で喉が詰まる、といった様子が目立ちます。録音して聞くと、口の中で鳴っているような印象になる人が多いです。
体では、あごの下に指を当てて歌ったときに、ぐっと硬くふくらむ人は要注意です。あごの下には舌を支える筋肉があり、舌に力が入るとここも一緒に固まります。歌っている途中で、あごの下が押し返してくるように感じたら、舌が力んでいるサインです。
原因はいくつか考えられます。緊張して喉を守ろうとする反射、高い音や大きな声を出そうとする意識、はっきり発音しようとして舌を強く動かす癖などです。いずれも、がんばろうとする気持ちから生まれる自然な反応なので、責める必要はありません。
今日からできる、舌の力を抜く直し方
直し方は、力を抜く、位置を覚える、声に乗せる、の順に進めると失敗しにくくなります。まず、歌う前に舌をゆるめる準備をします。口を軽く開けたまま、舌をだらんと下に置き、あごの力を抜きます。舌先を下の前歯の裏に添えたまま、ゆっくり息を吐いてみましょう。
次に、舌を前に出したまま声を出してみる方法があります。舌を軽く出して、小さな声で「あー」と伸ばします。舌が奥に引っ込まない状態で声を出すことで、舌の根もとが緩んだ感覚をつかめます。鏡で舌の形を見ながら行うと、変化に気づきやすくなります。
そのうえで、舌を戻して同じ「あー」を出します。舌先を前歯の裏に添え、さっきの緩んだ感覚を思い出しながら声を伸ばしてください。声が前に出やすくなり、喉の力みが少し抜けているのを感じられたら、方向性は合っています。
最後に、短い言葉やワンフレーズで試します。いきなり曲全体で意識すると、頭が舌でいっぱいになってしまいます。一語ずつ、舌の位置を確かめながら歌い、うまくいった感覚を体に覚えさせていきましょう。小さな声で練習できる点も、このやり方の利点です。
母音ごとに、舌の高さが少しずつ変わる
舌の位置は、母音によって変わります。基本の形を覚えたら、母音ごとの違いを知っておくと、より自然に歌えるようになります。ここでの違いは、固定した形ではなく、動きの方向のイメージとして捉えてください。
「あ」は、口を縦に開き、舌がもっとも低く平らになる母音です。舌の奥が下がり、喉の通り道が広くなります。舌の力みを確かめるのに、いちばん向いている母音です。
「い」と「え」は、舌の前のほうが高くなる母音です。ここで舌全体が奥に引っ込むと、こもった声になります。舌先を前歯の裏に添えたまま、舌の前だけがやわらかく持ち上がるイメージを持つと、すっきり響きます。
「う」と「お」は、舌の奥が少し高くなる母音です。そのぶん、舌の根もとに力が入りやすく、喉が詰まりやすい母音でもあります。唇を丸めながらも、舌の奥はふんわり下げておく意識が助けになります。
この違いを体で覚えるには、「あえいうえおあお」とゆっくり声に出し、母音が変わっても舌先が前歯の裏にとどまる感覚を確かめる練習が向いています。母音のたびに舌が奥へ逃げていないか、鏡や録音で見直してみてください。
自分では気づきにくい癖を、見立ててもらう
舌の位置は、口の中の見えない場所の話なので、自分だけで判断するのが難しい分野です。直したつもりでも、別の場所に力が移っていることもあります。そんなときは、声を聞いて見立てられる人に相談するのが近道です。
ATOボーカルスクールの体験では、声のクセと、最初にやる練習を伝えます。小さな声でできる練習があり、カラオケボックスから受ける人もいます。話し声だけの相談もできるので、歌に自信がなくても気軽に声を診てもらえます。
ATOでは、ATO 100³ METHODという見立ての方法を使っています。メンタル100×テクニック100×フィジカル100の300項目、各100段階で声を見て、たーなー先生の耳にAIの音声分析を重ねてトレーニングを導きます。舌の力みのようなフィジカルの癖も、全体の中で位置づけて整えていきます。
レッスンは、たーなー先生のもとで学び、歌の先生になった教え子たちが担当します。体験では、お一人ひとりの声のクセを一緒に確かめながら、いま取り組むべき一つの練習を決めていきます。舌の悩みを、その場で相談できるのも体験の良さです。
ブログには、発声や話し声のテーマの記事もそろっています。舌の位置とあわせて読むと、発声の全体像がつかみやすくなります。自分の声と向き合う時間を、少しずつ楽しんでいきましょう。
舌の力みや声のこもりを、声を聞きながら一緒に見立てたい方は、オンライン体験でお気軽にご相談ください。ATOボーカルスクールの体験を申し込む
よくある質問
歌うとき、舌先はどこに置くのがよいですか。
下の前歯の裏側に、軽く触れさせておくのが基本です。押しつけず、そっと添えるイメージで、舌全体を平らにやわらかく保ちます。
舌が奥に引っ込んでいるかどうかは、どう確かめますか。
声がこもる、喉が詰まる感じがあれば疑ってみましょう。あごの下に指を当てて歌い、硬くふくらむようなら、舌に力が入っているサインです。
舌の力みは、自分で直せますか。
歌う前に舌とあごの力を抜き、舌先を前歯の裏に添えて「あー」と伸ばす練習から始められます。声に出して気づきにくい癖は、体験で声を聞いてもらうと整理しやすくなります。
